■タグ「歪み」

■オーバードライブ(Pure Data パッチ)

デジタルの歪みはなかなか自然な感じにするのが難しく、自分なりにいろいろと検討しました。詳細は前回の記事(真空管風デジタル歪み)をご覧ください。
03p_211_1od.pngこのパッチをダウンロード
gain1では二次関数 f(x) = x2 + x を使い、波形を非対称に変形させて浅い歪みを調整します。ただそのままでは x < -0.5 のとき波形が折りたたまれる形になるため、[clip~ -0.5 100]を入れてそれを防いでいます。gain2は[tanh~]を使った対称ソフトクリップで、深い歪みを調整します。

個人的に便利かなと思い組み込んだのが、右側に配置している音量調節機能です。弾きながらadjust_vol(フットスイッチを想定)を押すと、エフェクト音の音量が原音と同じになるように変更されます。原理は簡単で、原音とエフェクト音それぞれに繋がっている[env~ 32768](左上と左下のあたりに配置)から出力される値の差を計算するだけです。

トーン調整についてはとりあえず単純なハイパスフィルターとローパスフィルターにしていますが、私の感覚には結構合っている調整方法のようです。デジタルなので内容の変更や追加は簡単にできます。気が向いたらクリーンミックスやフェンダー型トーン回路等いろいろ試してみたいと思います。

■タグ : 歪み PureData

■歪みと波形・倍音その10(真空管風デジタル歪み)

一般に真空管の歪みは偶数次倍音が多いといわれており、私が作った真空管アンプと真空管エフェクターでもそのような特徴がありました。よって偶数次倍音が奇数次倍音より多くなるような歪みが真空管の歪みに近いと考え、今回の目標とします。前回の記事で紹介したように、入出力の関係を表した関数(伝達関数と呼びます)で信号処理を考えていきます。



真空管のグリッド電圧とプレート電流の関係(Eg-Ip特性)は下図のような形になります。
12_210_1egip.png
通常真空管の増幅回路では、グリッド電圧の変化が入力で、プレート電流の変化を出力として取り出します。つまり上図は入出力の関係(=伝達関数)を大まかに表しています。あまり厳密ではありませんが、なんとなく形が似ている二次関数を使えばよさそうです。また、こちらのページでもx2の項により第2高調波歪が混ざることが記載されています。※後から気づきましたが、指数関数(ex)もたぶん使えます。

以下の伝達関数y=f(x)を考えました。
12_210_2_fx.png
プラス側は一応少しソフトクリップにしています。波形と倍音は下図です。
12_210_3fxLG.png
うまい具合に偶数次倍音が出ています。

高増幅率時(入力信号を大きくしたとき)の波形と倍音は下図です。
12_210_4fxHG.png
波形がほとんど頭打ち部分で占められるため矩形波に近い形になり、奇数次倍音の方が多くなってしまいました。

各波形の倍音をまとめたときに書きましたが、ハイゲイン時にはデューティ比が0.5でないパルス波の形にする必要があると思われます。そのための一番簡単な方法は直流を足して増幅の中心(バイアス点)をずらすことです。
12_210_5bias.png
うまくいきそうに見えましたが、信号が小音量のときは直流成分の影響が大きくなってしまいます。このときはデューティ比が大きくなりすぎ、まともな音になりません。別の方法でバイアス点をずらすことを考えます。

真空管アンプの回路では、大抵数段に渡って増幅されており、段間ではハイパスフィルタ(HPF)を通ることになります。これに倣って『低増幅f(x)→HPF→高増幅f(x)』という2段増幅を行ってみます。計算は省きますが、f(x)ではx2の項により2倍音と直流成分が加えられます。そしてHPFを通ると直流成分が除去され、バイアス点がずれると考えられます。結果は以下のようになりました。
12_210_6fxHGw.png
2倍音がやや少ないですが概ねOKでしょう。f(x)をもっと偏った非対称にすれば偶数次倍音がさらに増えてきます。



私自身は真空管が特別好きというわけではありませんが、奇数次倍音と偶数次倍音をある程度コントロールする方法がわかったことは意味があるように思います。あとは各種フィルタを使いこなせれば(簡単ではありませんが)、きっと自分に合った歪みエフェクトをプログラミングできることでしょう。

■歪みと波形・倍音その9(非線形性と歪み)

歪み系エフェクターのデジタル処理を考える場合、処理内容は基本的に関数の形(入力x、出力y)で書くことになります。以下にその例と非線形関数による歪みについて簡単に説明しておきます。倍音については前回の記事にまとめています。



まず理想的な増幅器を考えます。増幅率をaとすると、出力は入力に比例して大きくなるy=axという式になります。下図はa=1のときの入力と出力の関係をグラフにしたものです。
12_209_1lin.png
このように入力と出力が直線(比例)関係にある場合は「線形」です。直線の傾きaが変わっても線形といえます。正弦波を入力したとき(上図下側)、出力(上図右側)には全く歪みがありません。



増幅器には通常電源電圧等の制約があるため、一定の入力を超えたところから出力が頭打ちします。グラフでは、途中からyが一定となる形になります。
12_209_2hc.png
正弦波を入力したとき、出力はクリップされたものとなります。この場合は線形でないので「非線形」であり、歪みが発生するというわけです。しかしながら、単純なクリッピングのみで自然な歪みを得るのはなかなか難しいと思います。



現実の増幅素子では急に出力が頭打ちになるわけではなく、ある程度滑らかな変化だと考えられます。
12_209_3sc.png
上図の関数はy=tanh(x)で、このようにS字を引き伸ばしたような形はシグモイド曲線と呼ばれています。正弦波を入力したとき、出力はソフトにクリップされたものとなります。



真空管を使った増幅では、非対称で複雑なカーブになるようです。
12_209_4tc.png
正弦波を入力したとき、出力は非対称に変形しているものとなります。この場合の関数の詳細については別記事にまとめています。

■タグ : 歪み 波形・倍音

■歪みと波形・倍音その8(各クリッピングと倍音)

Pure Data(Pd)を使って正弦波のクリッピングと倍音確認を行ったので、メモとしてまとめておきます。振幅は適宜調節しています。



<対称ハードクリップ>
12_208_1clips.png
奇数次倍音のみ出ています。

<非対称ハードクリップ>
12_208_2clipas.png
偶数次倍音が加わっています。

<対称ソフトクリップ>
12_208_3clipss.png
ハードクリップより全体的に倍音が減っています。

<非対称ソフトクリップ>
12_208_4clipass.png
こちらも全体的に倍音が減っています。

<半波整流>
12_208_5half.png
偶数次倍音のみ出ています。

<全波整流>
12_208_6full.png
偶数次倍音のみ出ていて、基音がありません。オクターブファズでこの処理を行うことがあります。



クリッピングではありませんが、周波数2倍、振幅0.25倍の正弦波を元の正弦波に足した場合は下図のようになります。
12_208_7oct.png
真空管の歪みは単なる非対称クリップではなく、このような非対称な変形によるものといわれています。

半波整流した正弦波と元の正弦波を混ぜた場合は下図のようになります。
12_208_8halfp.png
非対称に変形した波形になるので、これを利用すれば面白い歪みエフェクターが作れるかもしれません。

■タグ : 歪み 波形・倍音

■歪みと波形・倍音その7(各波形の倍音)

Pure Data(Pd)を使うと簡単に信号発生と倍音確認ができますので、メモとしてまとめておきます。



<三角波>
12_207_1tri.png
奇数次倍音がきれいに並んでいます。

<ノコギリ波>
12_207_2saw.png
奇数次倍音と偶数次倍音が両方出ています。

<矩形波>
12_207_3sq.png
ほぼ奇数次倍音ですが、三角波より倍音が多いです。

<矩形波+ハイパスフィルター>(※振幅0.8倍)
12_207_4sqHPF.png
波形が斜めにえぐりとられる感じになります。

<矩形波+ローパスフィルター>
12_207_5sqLPF.png
波形が丸く削られる形になります。ローパスフィルターなので高域の倍音が減ります。

<パルス波>(※パルス波という呼称でいいのか不明)
12_207_6sq60.png
矩形波に似ていますが、プラス側とマイナス側になっている時間の幅の比が1:1(デューティ比0.5)ではありません。上図はデューティ比0.6の場合で、偶数次倍音が出ています。真空管の歪みを調べた際にハイゲインでも偶数次倍音が多かったのは、この波形に近いためかもしれないと考えています。

■タグ : 歪み 波形・倍音

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