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■歪みと波形・倍音その10(真空管風デジタル歪み)

一般に真空管の歪みは偶数次倍音が多いといわれており、私が作った真空管アンプと真空管エフェクターでもそのような特徴がありました。よって偶数次倍音が奇数次倍音より多くなるような歪みが真空管の歪みに近いと考え、今回の目標とします。前回の記事で紹介したように、入出力の関係を表した関数(伝達関数と呼びます)で信号処理を考えていきます。



真空管のグリッド電圧とプレート電流の関係(Eg-Ip特性)は下図のような形になります。
12_210_1egip.png
通常真空管の増幅回路では、グリッド電圧の変化が入力で、プレート電流の変化を出力として取り出します。つまり上図は入出力の関係(=伝達関数)を大まかに表しています。あまり厳密ではありませんが、なんとなく形が似ている二次関数を使えばよさそうです。また、こちらのページでもx2の項により第2高調波歪が混ざることが記載されています。※後から気づきましたが、指数関数(ex)もたぶん使えます。

以下の伝達関数y=f(x)を考えました。
12_210_2_fx.png
プラス側は一応少しソフトクリップにしています。波形と倍音は下図です。
12_210_3fxLG.png
うまい具合に偶数次倍音が出ています。

高増幅率時(入力信号を大きくしたとき)の波形と倍音は下図です。
12_210_4fxHG.png
波形がほとんど頭打ち部分で占められるため矩形波に近い形になり、奇数次倍音の方が多くなってしまいました。

各波形の倍音をまとめたときに書きましたが、ハイゲイン時にはデューティ比が0.5でないパルス波の形にする必要があると思われます。そのための一番簡単な方法は直流を足して増幅の中心(バイアス点)をずらすことです。
12_210_5bias.png
うまくいきそうに見えましたが、信号が小音量のときは直流成分の影響が大きくなってしまいます。このときはデューティ比が大きくなりすぎ、まともな音になりません。別の方法でバイアス点をずらすことを考えます。

真空管アンプの回路では、大抵数段に渡って増幅されており、段間ではハイパスフィルタ(HPF)を通ることになります。これに倣って『低増幅f(x)→HPF→高増幅f(x)』という2段増幅を行ってみます。計算は省きますが、f(x)ではx2の項により2倍音と直流成分が加えられます。そしてHPFを通ると直流成分が除去され、バイアス点がずれると考えられます。結果は以下のようになりました。
12_210_6fxHGw.png
2倍音がやや少ないですが概ねOKでしょう。f(x)をもっと偏った非対称にすれば偶数次倍音がさらに増えてきます。



私自身は真空管が特別好きというわけではありませんが、奇数次倍音と偶数次倍音をある程度コントロールする方法がわかったことは意味があるように思います。あとは各種フィルタを使いこなせれば(簡単ではありませんが)、きっと自分に合った歪みエフェクトをプログラミングできることでしょう。

■歪みと波形・倍音その5(RetroValve)

真空管代替部品「RetroValve」(スタンダードゲイン)を購入したので波形・倍音を調べました。

歪みと波形・倍音 記事一覧

RetroValveのメーカーサイト→JET CITY AMPLIFICATION



【Fender Champ Amp AA764改】(12AX7をRetroValveに変更)
(ローゲイン)
12_139_1ChampLowGainRV.gif
真空管使用のときと同様、偶数次倍音が多く出てきています。

(ハイゲイン)※ちょっとゲインが低めだったようです。
12_139_2ChampHighGainRV.gif
真空管使用のときと波形が同じですが、出力管(6BQ5)での歪みかもしれません。



【Tube Drive 200V】(RetroValve使用)
(ローゲイン)
12_139_3TubeDriveLowGainRV.gif
真空管使用のときと同様、偶数次倍音が多く出てきています。

(ハイゲイン)
12_139_4TubeDriveHighGainRV.gif
真空管使用のときより波形が角ばっている感じです。偶数次倍音より奇数次倍音が若干多い気がします。



・総評(のようなもの)

RetroValveは真空管と同じような倍音となることがわかりました。真空管と違って交換が不要で発熱も少ないためとても便利だと思います。中の回路を調べたいところですが、チップ部品が使ってあるので難しいようです。うまく利用すれば良い歪みエフェクターが作れるかもしれません。

■Fender Champ Amp AA764改~木工編~

07_136_2Champf.jpg
以前作ったChampですが、真空管がむき出しのままだったので、木でキャビネット的なものを作りました。まぁ切ってボンドとネジで組み立てただけで、取り立てて説明するようなことはありません。塗装は水性ニスだけで済ませました。
適当に安いパイン材を近所のホームセンターで買ったのですが、結構反っていて苦労しました。合板や集成材の方が反りにくくて使いやすいかもしれません。

07_136_2Champn.jpg
真空管アンプだとどうしても図体が大きくなってしまいます。

■歪みと波形・倍音その3(真空管他)

久方ぶりに波形・倍音を調べました。

歪みと波形・倍音 記事一覧



【Fender Champ Amp AA764改】
(ローゲイン)
12_135_1ChampLowGain.gif
偶数次倍音が多く出てきています。

(ハイゲイン)
12_135_2ChampHighGain.gif
やはり奇数次倍音より偶数次倍音が多いです。波形は今までにない変な形ですね。



【Tube Drive 200V】
(ローゲイン)
12_135_3TubeDriveLowGain.gif
Champと同様偶数次倍音が多く出てきています。

(ハイゲイン)
12_135_4TubeDriveHighGain.gif
波形はChampと違いますが、奇数次倍音より偶数次倍音が多いです。



【BOSS BD-2 Blues Driver】
12_135_5BD2.gif
波形に丸みがあります。回路図からするとJFETとダイオード(対称)両方の歪みがありそうです。意外と偶数次倍音も出てきています。



【PINK LLAMA】
12_135_6Llama.gif
真四角な波形です。LEDクリッピングに似ています。偶数次倍音は少なく、真空管に近いとは言えなさそうです。



・総評(のようなもの)

一般的に真空管の歪みというのは偶数次倍音が多いと言われています。今回調べてみて、偶数次倍音が奇数次倍音より多いというのがポイントかもしれないとわかりました。ただそれを真空管以外で再現するのはなかなか難しいようです。ネットで検索しても調べている人が少ないです。今後いろいろ試していきたいと思います。

■Tube Drive 200V

02_91_1TubedP.jpg
前回作成した9V→200Vの昇圧回路を使って真空管オーバードライブを作りました。

▽回路図
02_91_2TubedSch.gif
通常の真空管の増幅回路にブースターとRAT風トーン回路をつけ加えただけの回路です。ブースター部分のゲインはトリマーにしました。発振しやすいのでこのゲインはあまり上げられません。もう少し帯域をしぼった方が良いと思われます。高音域はC2やC10の値を大きくすれば下がります。低音域はC11の値を小さくすると下がります。もう少し簡単に調整できた方がいいかもしれません。

真空管のヒーター電圧6.3Vを得るために9Vを抵抗で6V(実測値は5.9V)に下げています。その分熱になって無駄になってしまうので、できれば12V供給で直接ヒーターにつなげる方がよいです(その場合配線の仕方が変わります)。消費電流は全体で450mA弱になりました。電池では動きません。

▽レイアウト
02_91_3TubedL.png
▽PCB上(横81.3mm縦45.7mm)
02_91_4TubedLP1.gif
▽PCB下(横81.3mm縦20.3mm)
02_91_5TubedLP2.gif
電源部分の基板を分けています。意外と上側の基板がスカスカなので1つにまとめるのも可能だったかもしれません。ケースはタカチのTD9-12-4Nです。

音はというと真空管っぽい粘りがあるような気がします。そのうち波形を測定してみる予定です。結構歪むんですがゲインを上げすぎると発振します。※発振にはくれぐれも注意してください。ノイズは若干多めかなと思います。

4時間程度通電状態で放置してみましたが、発熱は大丈夫なようです。ただ電圧が180V程度に落ちていました。空気のない音というブログで同様の昇圧回路が検討されているのですが、そのブログによると昇圧回路に使っているトランジスタの温度変化のために電圧が落ちるそうです。MOS-FETにすると少しはマシになるらしいです。まぁ多少電圧が下がるぐらいは大して問題はないと思います。塗装にはアルミ用の塗料を使ってみたんですが、確かに値段が高い分塗料の食いつきはよさそうです。

まだまだ改善点がありそうな感じですが、ひとまず成功ということにしておきます。

(2016年11月9日部品リスト・PCB追加)

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